circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

20060326

 
追悼歌
 
 
誰もいない夕暮れの長椅子で横になっていると空を飛んだような気持ちになるんだ
って君が囁いたその声が僕の中を金色の龍みたいに滑っていくから
僕は君のきれいな耳元を少し貸してもらってああ世界は美しいなって囁き返したんだ
 
そして僕は想うんだ貸してもらった君の耳から僕の視野へと変化してゆく世界の空(から)をどこまでも追いかけて
いくとするとそうもうそこは君の耳では囁けないという二度も繰り返すこの夕暮れを
 
例えば僕がこの夕空の中に傾いていきたえたとしても君とそのきれいな耳の中にこの夕暮れと僕の囁きが眩しい音楽と
して混ざり揺れ続け消えないでいるのだとすれば
君がその夕暮れを君の時の終わりまで繰り返し僕がその中で音も無く傾き続けるのだとすれば
 
(沈黙)
 
そしていまこのうつくしいさんがつに君の時の終わりが来てしまい横たわる君のもはや何も聞こえない耳の中に僕はまだ何かを囁き続けている
もう君は僕とともに美しい夕暮れを見ることはできなくなってしまったけれどでも同時にあの突然微笑みかけたひとの頭が分裂して中から
血だらけの胎児が次々と出てくるような恐ろしい映像をもう君が見なくてすむようになったことを僕はただ祝福することしかできなくて
本当に僕はただそれだけを祝福することしか、できなくて