circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

シャンタル・アケルマン/アメリカン・ストーリーズ

「東から」が良かったのでとりあえずいま下高井戸で見れるもの全て見ようと思う。今のところ東からが一番良かったのだが。冒頭、ストローブ=ユイレアメリカ」で見たような海からのニューヨーク、自由の女神(「アメリカ」ではストローブ=ユイレの徹底したところでヘリコプターがNYCの上をブンブン飛んでる。カフカ時代なのに、だからこそ。ストローブ=ユイレの「早すぎる、遅すぎる」と「アメリカ」の間に、カロリーヌ・ジャンプティエはシャンタル・アケルマンの「一晩中」のカメラをしている)。高まる期待、そして続くフェイクドキュメンタリー。後世のニューヨークのユダヤ人に自分の母の時代の歴史を切々とかたらせる、それが真実っぽくてすごい。本人の話かと思ってしまった。みんな、死にたがっている。金持ちになっても不幸、基本的には渡米一世なのでみんな金がなくて、小汚くて、生きるのが辛い感じのなかに、妙な小芝居がちょくちょく入る。語りの後にすぐにカットが入るのが、当たり前なのだけれど、そこまでの長回しから行けば、すぐ切るの勿体無いな、黙っているシーンがあと数秒欲しくなる、というのはストローブ=ユイレ病か。ニューヨークの、端っこの、雑な感じ、ブルックリンとか、すこし荒れたような感じを、懐かしく、思い出して泣きたくなった。ニューヨークという都市は、行く前に抱いていた華やかな印象と程遠く、古い都市だったことを思い出した、何せ、あんなに高いビルを建てた一番古い都市なんだから、もうあんな狭い中で、建て替えも一苦労で、落書きとか汚れとかもあって、、、そんな歴史を移民たちが作った、それを自由の女神を観に行くわれわれ観光客はセットで必ず移民の審査をした島もみることになる、あの、アメリカの啓蒙思想、割と好きよと思った。なんだろう、みんな平等に不幸で、しかし、歴史がなくて軽い、古い高いビルの歴史とほぼイコールな歴史が、空へ貫いている。みんな不幸であるが、なんか歌ったり、冗談を言ったりしている。ユダヤ人の人たちをたくさん観たこと、ユダヤ系のスーパーマーケット(フレンズに出てくる紙袋のやつ)に英語学校の授業で出かけたこと、なんかを、思い出して。なんだろう、退屈ではない、決して。ゴダールとS-H以降の映画という感じはある。だけど、いずれにせよあそこまで突き詰めてしまいはしない。共感できる隙がある。極限までいったような「東から」ですらその共感の隙間があった。もう少し見続けよう。