circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

「遅刻したら学校に行きたくなくなった。」
「どうしてそんなにゼロイチなんだい?0.5が泥沼に生きる方向だぜ?」
「泥沼やだ。アメリカ横断クイズのトマト合戦クイズってのがあったね」
「あったね」
「あれ、痛そうだったね。そもそもトマトを無駄にするなって怒りを覚えたね」
「いかんね、食べ物を粗末にする番組はダメだね。でも福留さんはあの番組がいちばんかっこよかったね。『ボタンを押してから』とか、短く注意するの。超偉そうなの。」
「そうそう、クイズのときいつもすごい厳しい顔してるんだけど、ときどき笑うんだよね。あれはよかった。」
「それに比べてズームイン朝はいつも笑ってたからつまらないね」
「あのひとはアメリカ横断クイズだけに絞るべきだったね。ハードだけど。」
「しかしゴールがニューヨークで船の上でアメリカ美女のキスっていうのは、ものすごくステレオタイプだよね」
「あのキスには憧れたなあ…」
「ひょっとすると君の安い上昇志向はアメリカ横断クイズの悪影響かもしれないぜ」
「うむっ そんなことより学校へ行こうぜ」
「話を戻されたか」
「どろどろに生きようぜ、かっこ悪くても。遅刻して、堂々とごめんなさいって言えばいいんだよ。鬱なんだから仕方ないさ」
「なんでも鬱のせいにするね」
「でも元凶はそれなんだから仕方ないさ。いまは意志力とか言う時期じゃない。意志力を云々するなら、いまここで寝て過ごすほうが意志力がないよ」
「そうだね。行こうか、ゆっくりと。」
「ゆっくりと。」
「着替えよう、寒いの嫌だな。」
「ストーブつけなよ」
「そうだね、ストーブをつけて、着替えて、出かけよう、恥ずかしいな、恥ずかしいな」
鬱病人の特権だよ、はずかしがるこたあないよ。」
「すごいね、世の中でいちばん鬱病人がえらいみたいな口ぶりだね」
「いや、偉くないんだけど、頼らせてもらうっきゃないよ。松葉杖なかったら歩けないのと同じで、人に松葉杖になってもらうしかないときもあるんじゃん」
「そうか、そしたら基本は謙虚じゃないといけないね」
「そうだね、謙虚に、そして同時に悪びれないことだね」
「謙虚に、悪びれない。」