circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

キラ・ムラートワ/無気力症シンドローム

同監督の「長い見送り」に囚われてから以降十数年ずっとみたかった映画。待ちすぎた感と、私自身が無気力症シンドロームに犯されているのだなという感じ。長い見送り、をみた時に確かに覚えた瑞々しさ、眩しさのようなものは感じなくなり、このやたらな暴力、乱暴性はゴダールのウィークエンドとかで見たやつだな、とか、アレクセイ・ゲルマンとか、カネフスキー「動くな、死ね、甦れ!」でみたやつだな、など、別のことを考えてしまう。ただ、やたらガラスしかない電車の移動していくシーンに疲れた彼女だけが乗っているシーン、電車の音響も含めて最高だし、なにより「二幕物」と最初にフリがあり、そのオチが本当に見事で拍手しそうになった。人の裸で彫刻を作るのだ、というのはこのまえ「パッション」でもっとすごいのみちゃったな、とか、いらんことばっかり考え、しかもストーリーが「長い見送り」の時のように中心を貫かず、ゴダールみたいに断片が散らばっているので、それがゴダールの90分ではなす2時間半あると厳しいものがあると言わざるをえない。ただ、ほんとにところどころびっくりするようなギャグがあってそれはいいのだけど。魚屋の前に並ぶ客の無駄な暴力具合だとか。魚の生々しさだとか。精神面金銭面両方の貧困の描写(これをしたからソ連から非公開ということになるのだろうか)。ラストシーンの電車も素晴らしい。