circustic sarcas

Diary of K. Watanabe


 当時の大部分の画家たちは、アトリエ用の小道具を集めることが従来の伝統だったせいもあり、多少「芸術的な」宝物を集めて、身の回りにがらくたの山を築くのが習慣になっていた。それに対して、ビアズリーの芸術は、ものに囲まれた生活を潔しとしなかった。彼のイメージは、周りに見えたものからではなく、内なる目から発せられた。後述するように、歌麿のエロティックな浮世絵版画を集めたセンセーショナルな画帖を、ウィリアム・ローゼンスタインから譲り受け、所有していたこともあった。しかし、そうしたきわどい版画を額装して壁にかけたのは、訪ねてきた人を驚かせ、ロンドンの美術界における「恐るべき子供」としての自分の立場を確実にしようと考えたからに相違ない。