circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

あめにはさかえ


あの人は神様という言葉をあまり感じなくて、天という言葉を書いたのだった。あの人のこと、考えるのやめるべきなのだけれど、あめ、ということばを思い出すたびに思い出す。ぼくはルドンが好きで、あの人はどこからかルドンの絵葉書を手に入れてくれた。京都のどこにそんなところがあるのだろうと思って、聞いたのだけれど、あの人は笑って、天から降ってきたのと言った。神様がくれたの?と聞いた。神様というのとはちょっと違う気がする、とあの人は言った。なんとなくなのだけれど、あの人はたぶん特定の宗教臭は詩的さからとおざかると感じていたのだと思う。生きている詩、というものを、ぼくはいままで何人かみた気がする。みんな、それぞれ、足元が地面から数ミリ浮いていて、こんな人が生きているという世の中であれば捨てたものではない、と思うのだったけど、でも、僕のそれはいつも半分だけ恋をしているのだと思う。あと半分は信仰なのだったりするから、それが狂信になって、あの人は消えてしまうことになる。生きる詩は、たしかに、みんな消えた。