circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

友達とその恋人は寝ている。眠れないで隣の部屋にわたしはいるのか、彼女がいるのか分からない。どちらが先にせよ、わたしはたぶん彼女と二人きりで話したかったんだとおもう。その気持ちで眠れない。のだろう。わたしが先に隣へいって、待っていたにせよ、隣で起きている気配に、お手洗いに立ったついでを装って話しかけたにせよ。そこは夜三時ぐらいのキッチンの、小さな丸い机で、何も話さずに、あるいはすこしだけ話して、ずっと手を握っている。くらく、小さく。なぜ、そんなことをしようと思い、しかもそこで踏み止まっているのか(隣りから起きて来たときに話しているだけを振る舞えるように、だろうか)そして、なぜそれは許されているのか。手を触れているだけで、握っているだけで、いろんな気持ちや感覚が伝わり、それは、生きていることの温かみだったり、癒しや落ち着きだったり、そもそも、性的交渉じたいが、癒しであって、苛々とした場所と反対のところにある、のであれば、こうやって手をつないでいることが、すでにその始点ともいえるし、それでもう十分とも言える。これ以上が必要であれば、言ってくれたらいつでもあなたのところへ行くし、そうでなければそうでなくていいとおもう。少しだけ話す言葉は、そんなことだけで、あとはずっと手を重ねて、そのまま夜が明けて行く。