circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

カール・ドライヤー/ゲアトルーズ(1964・デンマーク)

http://cinema.intercritique.com/movie.cgi?mid=10572
アテネフランセ文化センターにて。ドライヤー初体験。聞いたほどに圧倒されなかった、映像も、ベルイマン「夏の遊び」に似ているがあの極限までには美しくない。ただ、話がやたら面白い。もう荒唐無稽なほどに面白い、にもかかわらず笑えない、笑わない映画館。というか、ドライヤー自身が、ものすごく深刻な顔をしてとんでもないジョークをいっている、という感じであった。なんというか、神父が史上最強のギャグをいっているような感じ。ある意味すごい。
エキセントリックかつ重々しくかつエロいというわけのわからない映画で、ちょっとリズムが会わないなと思うところもあった。寡黙であることタルコフスキーの如しであるが、それにしては場面転換が荒かったり、ややリズムが速すぎるような気もして、間の感覚が会わないような気もした。長回しのシーンが多くて、タルの「サクリファイス」を思わせるような趣もあるし、一方でその淡々とした転換はむしろロベール・ブレッソンみたいでもあった。ストーリー展開の激しさには正直唖然とした。愛と性欲に振り回される女の悲劇みたいな感じ。一見貞淑に見えるゲアトルーズがいったい何人の男と関係を持っているのかというぐらい次々と男が出てくるのが笑えるのだが、映画の基調はとてもシリアスで、いつもみんな深刻な顔をしているし、物語自体が性愛に対する肯定と疑問と破滅みたいなシリアスなお話であって、笑いたいんだけど笑えないというこうなんともいえない激しい映画で、見終ったあと激しく疲れてしまった。絵はきれいだった。移動の滑らかさ。あと、ここぞと言うときに流れる無調音楽と調性音楽と鐘の音の使い方がおもしろかった。しかし基本的にはBGMを使わず静かであり、その音に対するストイックな姿勢も好きだった。しかし何しろ疲れた。「肉欲」の話ばかりしているのにここまでえろくない映画というのはいったいなんなのか。まずゲアトルーズがちょっとおばさんなので萎えるのだが、これがもうすこし若くてきれいな女優だったら、こういうせりふだけの世界でもえろさはあったのかもしれないが、しかしながらここにえろさを感じられない僕がおそらくはまだ若いのだろうとも思う。ドライヤーこれが遺作というのがなんともかんとも、と思った。でもとにかく映画館でなくて、家で友だちと見れば必ず笑えます。まじめな顔して「性欲!」とか言い続けてるんだもん、とくに悪趣味な少年少女行進合唱団と、まじめな顔して性欲演説する少年が素晴らしかったです。いや一番すごかったのはゲアトルーズの裏切られ方だったな…裏切り方もすごいんだけど。でも以外とどろどろしていない。それがたぶん、ドライヤーのすごさなんだろう。ストーリーだけ書くとどろどろなんだけど、みていてそれが昼ドラみたいになってないのがすばらしい。みんな必死なのに、みんな諦めていて、みんな戦ってない。みんな絶望している。だけどえろい。おかしい。エロは生に結びつくんじゃなかったのか!と。いえ、ちがうんですね(淀川節) 半お勧め