circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

遠いところの音と音
暗い森からみあげる空
なにものにもなれないわたし
ぼんやりと生きている
かたちにならないものに塗れる
言語から意味をとったらうかぶって
わたしが死ねばわたしのなかにしかないそれは


                  1. +

雪の塊のように投げつけられる言葉

なぜ そこまでして はらをきらなきゃいけんのか
なんでそこまでして
じぶんの プライドをみせ つけなきゃいけないのか
おれにはようわからんが
すごい それは すばらしいことだ かもしれませんね Samurai

http://www.nicovideo.jp/watch/sm2226552

なぜ そこまでして はらをきらなきゃいけんのか

ホップ、ステップ、ジャンプの距離。自然。

なんでそこまでして

なぜ、から、なんで、へ。ホップステップの構造ではなくなり、繰り返しが巧妙に避けられる(巧妙とは言っても、センスの巧妙さで、自然なのだろうと思う)

じぶんの プライドをみせ つけなきゃいけないのか

「を」ではなく、「みせ」で切るということ、これもたぶん本能的な選択なのではないかと思うのだけれど、リズムのセンスからも(ここでもホップ、ステップ、ジャンプの構造になる)、「みせつける」という常識的なことばを切断するといういみからも、とても好き。そしてまた巧妙に、「つけなきゃいけないのか」、と、1度目の「いけんのか」の反復をすり抜けている。2回目の方がなぜか長く、丁寧になっている印象がある。意味の世界からは、「プライドをみせ」というcollocationが話者の中でおそらく強いのと、あえて「つけなきゃ」をはなすことによる強調意義の強調を感じる。

おれにはようわからんが

「いけないのか(ぁ)」からすっとはいる、ここで息継ぎはしていない様子(この間髪ではできない)。(ぁ)に代表されるようにサスペンドする語尾が、背後でまだなっている(このあたりで消える)美しい3度鳴らされたコードのサスペンド状態に呼応していて、一つのスタイルを形成しているようにも思われる。
意味としては、ここまではストレートに理解できる。ここからがねじれる、というか、解釈がわかれうる。

すごい それは すばらしいことだ かもしれませんね Samurai

この「すごい」はあとに(!)がふされるべき語調で、短くはなたれており、これだけ長く言ってきた内容を、ようわからんという内容を、短く「すごい」という評価でまとめてしまった、言い切ってしまった、というところに強さがある。強さは常に、そのまえのもやもやと、無根拠で短い断言とともにある、かのように思われる。
なのに、このすばらしいところは、切腹へのこだわりとプライドの高さは「すごい」と言い切ったあとで、「それは」と何を受けるのかわかりにくい指示代名詞が入って、このフレーズだけ聞いていると、「すごい」ということが「すばらしい」というように錯覚をしてしまう、わたしは。「わからんが」と「すごい」の間に、わりと間があるから、余計にそう思う。すばらしいことだ、というのは、すごい、が指していると思われる切腹とプライドのことを言っているのだろうか?たぶんそうなんだろうと思う。2度言う、という、すこし言い方を変えて2度いう、という一つの語法なのであろうと思う。なのに、2度断言しているのに、なぜか「すばらしいことだ」の「だ」にすでに迷いが見えているようでもあり、「と」と「だ」の間に明確な破裂音dではなく、nに寄りぎみのdにきこえる。「と」の母音も弱母音のシュワのように聞こえる。すでに「かもしれませんね」への脳内の架け橋がはじまっているかのようだ。そして「かもしれませんね」の「ま」は「や」との合いの子みたいになってしまう。唇を閉じきれなかったからだと思うが、閉じ「切る」という行為はすでに「かもしれない」という曖昧とは矛盾していることを自ら体現しているかのようにすばらしい。そして、そこまでぶっきらぼうな口語常体が、最後だけ敬語体となり、丁寧の助動詞「ます」が現れるところがすばらしいし、だからこその噛みなのかもしれない。



            1. ==++••

言葉はあふれたりしない。


覚えている,言葉の片,片片、友達の。リノリウム,廊下,さあ早く、さあ早く。


言葉の片辺か、星座の座標.ベクトルの引き方,知ってる?……だってよ、(あなたの聞こえている音)さあ速く、さあ速く。萌よりも速いスピードで,駈けぬける,廊下という廊下を、階段という階段を.


わたしはきみに殺されたいと手紙を書いた。それが、きみがわたしを恐れることになった通牒だったのだと思う。秋に染められた……なぜそこに死がなくてはならなかったのか、昨日歩きながら考えた。