circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

9/21

ある日、ぼくは透明の部屋であの世からきこえてくる音楽をききながら黙想していた。すると窓から、まるで天国からふきこんできたような静かな幸福にみちたそよ風が入ってきて、僕を包んだ。


「どうしてそんな浮かない顔をしているの?」そよ風はたずねた。
「これから何かあるのかい?」


「ああ」僕は答える。
「五時四十分に塾に出かけ、三時間勉強して九時四十五分に帰るとすぐさま夜食を食べ、食べ終わると思うと今度は数学の自主勉強を始める。それが終わったら社会。それが終わったら部活の仕事。それが終わる頃には一時になり、やっと寝、六時間不純な夢に悩まされ、七時半に起きると朝食を詰め込み、疲れた体にむち打ってくだらない学校に行く。毎日毎日毎日毎日。ああ。毎日こんな生活さ。」


するとそよ風は僕に同情し、暖かく包み込んで、僕に少しの幸福を分け与えてくれた。
そしてまたそよ風は無邪気に窓から飛び出し、どこかへ踊っていった。



*



現世から抜け出して天上の人間になろう。


はかない夢は、美しく、
やがて流星のようにわずかに尾を引いて
消えていく。


僕にとって「夢」とは将来こうなろうとかじゃなくて、またねてるときみるものでもなくて、それ自体が生活だ、しかも僕の人生をぐちゃぐちゃにする麻薬だ、けれど僕はそれにすがって生きていく。



*



数学じみた微笑。


「あらゆる悪は憧れを忘れることから始まる」


僕は天使でいたいし、
憧れは忘れないし、
天使になれるかもしれない。