circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

僕に見えるのは映像ばかりで、物語がそこに生まれない。そこに自分以外の人物を見出すことができない。その人物の歴史など考えることすら出来ない。今、インドネシアの島の海岸で見たスコールのことを思い出していた。僕は一人で歩いていて、雨が降ってきたので走って逃げた。途中で足をレンガにぶつけて親指に怪我をした。その雨の美しさを覚えている。海の美しさを覚えている。一人の寂しさを覚えている。どこにもいけない焦燥を覚えている。…だがそれだけだ。


ぼくには物語がかけない。リアルな人物を作り出すことが出来ない。ぼくじしんのことでいっぱいいっぱいだからだ。世界を構築することが出来ない。私小説しかかけない。詩をかくにしても自分の事しかかけない。あとは音韻に頼ったりする。日本語の音韻に頼るのはもうやめにしたいと思う。もっと普遍的なものを書きたい。訳されてもいいものを書きたいのだ。


風景を書きたい。時間を書きたい。記憶を書きたい。自分ではないものを通して自分を書きたい。