circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

三月の水、はこの録音を一番最初に聞いて、それがほとんど初めてのボサノヴァ(彼はその言い方を嫌い「サンバ」と呼んでいたと思う)体験で、こんなにすごいもの、こんなにすごいもの、と絶句したのを覚えていて(それにしても美しいアルバム)
http://www.youtube.com/watch?v=dqUSiTGb_aU
コード展開だけで聞かせていく、メロディはほとんど動かず、同じようなことばかり続いていく、それが、5分も。聞こえるのはギターと声と、複雑なパターンを見せるマラカスのようなハイハット(でいいのだろうか、あの箒みたいなやつ?)
歌詞のことは知らなかった。

これは棒、これは石 道の終わり、切れ株の残り ちょっとだけひとりぼっち
ガラスのかけら 命、太陽 夜、死 投げ縄、釣り針

一番鬱がひどかったときに書いた自分のものと似ていて、それで泣けてしまった。

あらのをあるいた。土、岩、石ころ、草、葉、笹のような水にぬれた草、そしてまた土、石。
ページに目を落とす。ひとりぼっちで荒野をよぎる。
荒野のはてに。荒野のはてに。わたしはひとり。


エレベータで八階へ登った。大きな窓が二方向にあって、
百二十度の景観のある、でもだれも来ないエレベータの裏。
ビルは低い。空は広い。


太陽が広い空に帯を描く。遠くに富士。
北を見る。
時計台の陰から小田急の特急が、つながったソーセージみたいに次々と出てくる。
ゆっくりと、とても長く。


井の頭線の屋根が家と家の間を行き交いしている。
太陽が沈み始めた。
富士の向うに落ちると、そのシルエットが紫色の空に浮かぶ。
その空に足をひた、そうとする。

「あらの」たる駒場第二キャンパスの人のいないグラウンドを歩きながら、どこへ行くこともできず、なにもできず、生研のビルの上から飛び降りることばかり考えていた。深夜、誰もいない屋上で踊った。