circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

羽田。国際線の、展望デッキ。ぼんやりと過去に書いたものを読んでいる。

出発ゲートで恋人と別れたあと、僕は一人で五階へ上り、特上ロースかつ定食1100円を食べた。この前は一緒に食べたが今度は一人だ。食べ終わるとそろそろ飛行機が飛ぶ時間だった。展望テラスの手すりにつかまって飛行機が飛んでいくのを見ていた。おじさんが来て、「今日もよく飛ぶね」と言った。「飛びますね」と答えた。僕もおじさんも立ったまま滑走路を見ている。飛行機は意外と大きな角度で上昇していった。つぎつぎと。
「おーい」とおじさんが言った。僕もおーいと叫んだ。飛行機は益々飛んだ。A航空の飛行機が来て、これも無事に飛んだ。「行っちゃったね」とおじさんが言い、行っちゃいましたね、と答えた。
だれか見送っているんですかと僕は言おうとしたが、毎日来ているのだなと思って、黙ってしまった。おじさんも黙ってしまって、ふたりで行ってしまったA航空の小さな姿を追って立っていた。