circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

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私が今から書こうということは、全人類のだれにも役立つものではない。これは真の英雄へのオマージュなのか、私自身へのレクイエムなのか。


夕日は西に沈みかけていた。
空は黒く光っていた。
その向こうでは言い表せぬほどの美しい、
赤く染まった空気や、雲がただよっていた。


彼は、破壊されつくしたこの世界で、
ぼうぜんと、
一人で立ちつくしていた。
この星に降りたってきたことが
あまりに彼にとって無情で、
一人、海辺に立ちつくして、
自分の、どこかも分からぬ古里のことを、
考えながら、
遠い宇宙を見上げるしか
なかったのだ。


しかしその宇宙さえも、
人間の人工的シェルターによって、
とざされていた。


彼は、黒く光るシェルターの
向こうに輝く西の夕日と空の鮮血のような赤さを
見た。いや、感じとった。


戦火のような赤さだ。
またそれは、血のような赤さだ。
それが、これほど美しいとは!!


これが、破戒の美しさなのか...


彼は考えた。
そしてこの星にいる事が嫌になった。


彼は旅立った。
この星から。


その時点でもうこの星に、
未来は亡くなった。


彼は風のように消えていった。


人間とは馬鹿なものだ。