circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

すくりゃーびんすくりゃーびんすくりゃーびんすくりゃーびん
 
愛した人の顔が思い出せないような。でも存在がかつてそこにあったという空間だけが雰囲気的に残っているというような。欠落というのではなく、秩序だたない反物質がそこにそんざいするというような。つかみどころのないものが、さらにつかみどころのない形でそこにあるというような。もはやぼくはプーランクのある作品群とスクリャービンの違いを思い出せなくなっている、ぐらいに、つかみどころのない、無調ぎりぎりの、だけれどもあなた(たち)はこちら側の世界にいる、ぼんやりとしているけど彼岸ではない、やっぱりこっちにいて、だけどほんとうにあなたはこちらにいるのか
 
たぶん消えるのだとおもう
 
美しいものは美しすぎて独占したいとさえおもわない。近づきたいとすらおもわない。近づくとたぶんぼくの穢れを擦り付けることになるだろうから。近づくと実体化してしまいそうな気がして、わたしはべつに検分したいわけじゃない。
 
ふわふわとしたわせいのうえのふわふわとしたメロディーを思い出そうとして、どうしても、思い出せない。思い出そうとすると、プーランクが流れる。スクリャービンの愛すべき小品たちを思い出そうとして、どうしても思い出せない。愛している(た)ということばかり思い出す。