circustic sarcas

Diary of K. Watanabe

国境の町で神が微笑む


イタリア行きのバスに乗っていた。バスはスロベニアの首都リュブリャナを朝早く、それもとても早く出た。このバスは毎日は出ていない。3日に1遍ぐらい、朝だけだ。スロヴェニアで移動中に財布を落としてしまい大金(わたしにとっては)を失ったわたしはとても意気消沈していた。雨がざあざあ降っていて、バスの窓から、カルスト地帯のひろいひろい草原が、くもって見えた。ノートパソコンを開いて、ブルックナーの9番をかけた。目を瞑った。眠りに落ちた。


わたしの寝ている少しのあいだに降っていた雨がやんだ。国境の町だった。ふと耳元でブルックナーが安らかに微笑んだ。雲間から光がさした。視界が開け、眼下に、海へと下っていく坂の街が姿を現した。トリエステだ。